バラードで、フロアをロックする。

KAZIが大切にする、曲の「聴かせどころ」。
01 / BEGINNINGダンスミュージックから、J-POPの世界へ。

DJを始めたきっかけと、J-POPをプレイするようになったきっかけを教えてください。
ダンスミュージックが好きでDJを始めました。J-POPに関しては、たまたまお声がけしてくださった方がいて、そこからどんどんのめり込んでいきました。
02 / BALLADS ON THE FLOORバラードだけでも、フロアを作れる。
KAZIさんが感じる、J-POP DJならではの楽しさは何ですか?
バラード楽曲だけでも、しっかりフロアを作れるところです。
クラブシーンでかかるシックな楽曲は、ジャンルとしての具体的な名称はない印象ですが、ボーカルがしっかり前面に出ていて、フロアでも歌えるような楽曲です。
王道だと、スヌープ・ドッグ&ウィズ・カリファの「ヤング・ワイルド・アンド・フリー」、ジェイ・ジーの「エンパイア・ステイト・オブ・マインド」、ブルーノ・マーズの「ジャスト・ザ・ウェイ・ユー・アー」、ウィズ・カリファの「シー・ユー・アゲイン」などですね。
1日の中でかかるそうした楽曲って、結構限られているんです。でも、それがJ-POPになるというだけで、かけられる曲の幅がとても広がります。
女性のお客さんが多かったら女性が前向きになれる楽曲、男性が多かったら男臭い楽曲、季節ごとの名曲など、選択肢はかなりあります。他のダンスミュージックにはない、J-POP特有の面白い部分だと思います。
現場で「DJをやっていてよかった」と感じた、印象的な場面はありますか?
宇多田ヒカルの「First Love」という、自分にとって思い出深い楽曲があります。
実際に、その場にいた年齢も性別も違う全員が一緒に歌っていたのが、とても印象に残っています。
「First Love」には、どんな思い出があるんですか? フロアでみんなが歌う姿を見たときの気持ちも聞かせてください。
たわいもない話ですが、当時好きな人がいて、その子のためだけに自転車をこいでレンタルショップまで行って、ちょっと可愛いデザインのMDをわざわざ買って、曲を録音してプレゼントしたことがあります。
少しでも会話するきっかけが欲しくて、当時は必死だったんでしょうね(笑)。今思うと、なんか懐かしいです。
今の若い人たちは、ドラマ『First Love 初恋』をきっかけに、この曲を知った人も多いと思います。個人的にもすごくエモい作品だと思いますし、この曲を聴くといろいろ考えさせられます。
実際にフロアで「First Love」をかけると、さっきまでお酒を飲んだり、踊ったり、出会いを楽しんでいた、年齢も性別も違う人たちがふっと足を止めて、一緒に歌っている。
その様子を見ると、ここにいる人たちも、それぞれいろんなほろ苦い経験や甘酸っぱい経験をして、今日ここにいるんだろうなって思います。
そういう、それぞれの人生が一瞬だけ同じ曲の中で重なるような光景を見ると、DJとしてもすごくいい時間だなと思います。

03 / LISTEN TO THE WHOLE STORY間奏も、大サビも。その曲の良さを届けたい。
自分らしさが出る選曲や、得意な雰囲気を教えてください。
バラードでしっかりフロアをロックするのが、自分の色だと思っています。
いろいろな楽曲をかけますが、具体的にいうと、映画『君の名は。』で使われているRADWIMPSの「スパークル (movie ver.)」です。
この曲は長い間奏があるのですが、『君の名は。』の物語の中でもかなり重要で印象的なシーンで使われているので、その間奏は毎回かけています。作品を観ていた人には刺さりますし。
近年のJ-POPはサビ始まりだったり、曲自体がかなり短くなっていたり、DJもショートミックスが基本という風潮があると感じます。
だからこそ、間奏や最後の大サビなど、楽曲それぞれの「聴かせどころ」をしっかり拾って、その曲の良さを活かしながら雰囲気を作るのが得意です。
「スパークル」の長い間奏も毎回かけるんですね。その間、フロアではどんなことが起きていますか?
もちろん間奏には歌は乗っていないんですが、すでにそこで歌っている人が多いんです。
毎回見ていると、大多数の人がそこをサビと勘違いして歌い始めるんですけど、それだけ映画や楽曲が相当胸に刺さっていたんだろうなというのが、表情を見ていても伝わってきます。過去には、泣いている人もいました。
「movie ver.」は、実際に映画で流れる場面と楽曲が完璧にリンクしているんです。
サビ前に、ほぼボーカルだけになる部分があるんですが、そこに入ると、ほかのフロアの音楽が聞こえるくらい、お客さんが一気に聴き入るんですよね。
クラブで、まさかこういうパートを聴けるとは誰も予想していないと思うので、そこで一度フロアの空気が変わって、そこから歌に戻った瞬間にまたみんなで歌い始める。
その光景を見るのが好きですし、この作品自体もとても好きなので、間奏を毎回ちゃんとかけています。
歌える記憶と、聴かせたい間奏。
01 / SHARED MEMORY

ジャケット:Apple Music
First Love
宇多田ヒカル
年齢も性別も違う人たちが、一緒に歌っていた。KAZIにとって思い出深い一曲。
02 / LISTENING MOMENT

ジャケット:RADWIMPS公式サイト
スパークル (movie ver.)
RADWIMPS
毎回かけるという間奏。作品の記憶とともに、曲の聴かせどころを届ける。
04 / PASS THE BATON「あともう1曲」の期待を、次のDJへ。
次にかける曲は、何を見たり考えたりして決めていますか?
時間帯によりますが、基本的にはどんな時間帯でも飽きさせず、「あともう1曲聴いてみたい」と思ってもらえるような期待感を出すことを心がけています。
楽曲そのものは、男女比やお客様の服装など、その場の状況を見ながら決めることが多いです。
特にピークタイムや人が多い時間帯は、自分のターンの頭から次のDJに渡すまでのペース配分を、すぐにイメージできます。まずは前のDJのプレイで、フロアがどれくらい「お腹いっぱい」になったかを見て、出だしを決めます。
前のDJでまだ盛り上がりきっていなければ、しっかり盛り上げます。逆にお腹いっぱいになっているのであれば、料理のコースでいう「口直し」や「デザート」のように、違う提案を出します。
一晩の営業はDJ同士のリレーだと思っています。次のDJさんが得意とする部分にはあまり触れず、次のDJが一番スタートしやすい形に整えて渡すことを心がけています。
「口直し」や「デザート」という例え、気になります。実際にはどんな曲を選んで、フロアの空気を変えるんですか?
「甘いものは別腹」と言いますが、自分の中での「お腹いっぱい」というのは、踊りきって汗もかいて、もう少し休憩しないと動けないような状態を指します。
そんなときに、例えばスッとバニラアイスを出されたら、誰でも食べられると思うんですよね。ただ、濃厚なバニラアイスを食べたら、今度はフルーティーな紅茶が欲しくなる。
例えば、ちゃんみなの「SAD SONG」の原曲から、No No Girls FINALISTSと歌う「SAD SONG – From THE FIRST TAKE」、そしてHANAの「Blue Jeans」へ、みたいな流れです。
一度しっかり盛り上がったフロアに、いきなりまた重たいものを出すのではなく、聴き心地のいい曲へテンポよく持っていく。
そうやって少しずつ空気を変えながら、「もう少しこのフロアにいたい」と思ってもらえるように調整しています。
そうすると、疲れていた顔に不思議とまた笑顔が戻ってくるんです。
自分の国の音楽をもっと楽しんでほしいので、「少しでも長く聴いていたい」と思ってもらえるように、J-POPはこれからも丁寧にかけようと思っています。
SAD SONG(原曲) → SAD SONG(THE FIRST TAKE) → Blue Jeans
- 01

ジャケット:Apple Music SAD SONGちゃんみな原曲 - 02

ジャケット:Apple Music SAD SONGちゃんみなFrom THE FIRST TAKE
feat. No No Girls FINALISTS - 03

ジャケット:Apple Music Blue JeansHANA
05 / YOUR FIRST STEP好きな一曲を、その場で聴いてみる。
初めてジャパステに遊びに来る人へ、メッセージをお願いします。
ジャパステを知るきっかけは、TikTokライブや投稿が主だと思うのですが、最近ありがたいことに、配信を見て一人で来てくださるお客様がかなり増えたと感じます。
理由を聞くと、「DJを生で聴いてみたかった」という方が圧倒的に多いです。
大好きな一曲をスマホで聴くだけではなく、実際にその場で聴くことでしか味わえない楽しさもあると思うので、ぜひ一度、ジャパステに遊びに来ていただけたら嬉しいです!
これからJ-POP DJを始めるなら、まず何をやってみるといいですか?
自分が一番「好き」なテンポ(BPM)を決めて、それに沿って自分の気分が上がる曲を選ぶ。それを一つのプレイリストにまとめておく、です!
これから、どんなことに挑戦してみたいですか?
邦楽の中でのジャンルは決めていないですけど、楽曲制作一択です。

KAZI
TRANCEからDJキャリアをスタートし、ATOM TOKYOやTK SHIBUYAでレギュラーDJを務めてきた。HOUSE、EDM、POPS、K-POPなど、幅広い音楽をプレイする。
コンピレーションアルバム「I♡J-TRANCE」をリリース。現在はATOM SHIBUYAの「ジャパステーション」にレギュラー出演している。
構成・編集:ジャパラボ編集部 / 写真:提供写真

